和38号
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私は教育学部で幼児教育・保育を「森のようちえん」専門に学習指導をしながら、子どもの行動の意味や保護者・保育者の援助について研究しています。研究のきっかけとなったのは、幼稚園教諭として幼稚園で働いていた時の経験です。子どもたちとの関わりのなかでたくさんの発見があり、充実した毎日を送っていたのですが、課題もありました。食事の時に食べたがらない子どもや遊びに夢中になる子どもに対して、どのように働きかれば楽しく食事ができるだろうと悩んでいたのです。最初は“食べない”という結果にばかり気をとられていたのですが、少しずつ一人ひとりに何らかの理由があって“食べない”につながっていると感じるようになりました。 こうした経験に基づいた知見を深く理解するために複数の幼稚園でリサーチを行い、さまざまな事例を分析したところ、子どもの行動の背景にはまわりの環境や状況、それに伴う子どもの気持ちが大きく関連していることが明らかになってきました。これは表面的な行動だけをみるのではなく、子どもの生活や個性を理解したうえで援助することの大切さを意食事をテーマに行動の意味を研究子どもと大人が育ち合う否定するのではなく共感することが大切PIIICKUP NTERVEW|2|教 員子どもの行動の背後にある想いにふれる 味しています。 研究と並行して「森のようちえん」の活動にも携わっています。「森のようちえん」とは、自然体験を通じて子どもの感性や自主性を育むと同時に、保護者・保育者も共に育ち合う保育スタイルの総称です。 時間的・空間的に制約が少ない自由な状況に身を置くと、大半の子どもは何をしたらよいのか分からず戸惑います。しかし次第に一人ひとりがやりたいことをみつけて遊びだします。みんなで何をするかを決めるコミュニケーションも生まれ、方法や役割を自分たちで決めて遊びを発展させます。そのプロセスは多様で、改めて子どものイマジネーションや個性の豊かさに驚かされます。 また大人たちも「したことがないからダメ」「失敗するからやめておこう」という姿勢から、「やってみよう」というポジティブなスタンスに変化していきます。すると子どもはさらに自発的に遊びを楽しむようになります。このように子どもは、子ども同士、あるいは大人と影響し合って育っていくのです。大人と子どもでは同じ場所にいても見ている世界が同じとは限りません。援助・指導をする場合はすぐに行動や意見を否定せず、子どもの視点で考えてみることが大切です。大人の価値観だけで一方的に方向性を決めると、子どもの可能性を狭めてしまうことになりかねません。例えば、お絵描きの時に大人は画用紙に描く絵の完成を重視しがちですが子どもは筆液バケツに絵の具を入れて色の変化を見ることを楽しむかもしれません。こうしたことに気づくには、できる限り子どもと一緒に過ごし、共感することが不可欠です。この姿勢により大人も心に余裕ができ、育児・保育を楽しめるようになるのではないでしょうか。私は岐阜県を中心に活動する「ぎふ☆森のようちえん」に携わっています。「森のようちえん」は1950年代半ばのデンマークで一人の母親からはじまり、ドイツや北欧へと広まりました。スタイルは多様で、「ぎふ☆森のようちえん」は月に1回イベントスタイルで開催しており、指導にあたるのは幼稚園教諭や保育士、自然に詳しいインタープリター、そして保護者の方たちです。また、保育者養成も兼ねているため、幼稚園教諭・保育士志望の学生さんが実習やボランティアで参加することも。みなさん、新たな発見をしながら学び合っています。5 GIFU SHOTOKU GAKUEN教育学部 専任講師水谷 亜由美(みずたにあゆみ)→幼稚園教諭として幼児教育・保育の現場で経験を積んだ後、研究の道へ。食事をテーマに子どもの行動と生活環境・メンタル面との関連性について研究。その他にも行事型の森のようちえん「ぎふ☆森のようちえん」の活動に携わる。平成30年4月〜現職。
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