お知らせ
岐阜新聞真学塾 看護学部㉓ 古田千恵
出産(命の誕生)は"奇跡"の連続です
岐阜聖徳学園大学看護学部助教 古田千恵
私は現職に就く前、総合病院で助産師として働いていました。縁あって数えきれないほどの分娩(出産)に立ち会ってきました。元気に産まれてくる赤ちゃんがいる一方で、残念ながら「流産」や「死産」となってしまうケースに出会うことも少なくありませんでした。皆さんは妊娠や出産をどんな風にとらえていますか?多くの方は、"妊娠すれば赤ちゃんは元気に生まれてくる"そのようなイメージではないでしょうか。
しかし、出産(命の誕生)は"奇跡"の連続です。
ある文献1)には、人が生まれてくる確率を次のように説明しています。
『a. 父と母が出会う確率:100万人に1人
〈生殖年齢として〉
b1. 一生の男性の精子:1億個/日×365日×30年
b2. 一生の女性の卵子:13個×年×30年
a×b1×b2という膨大な数の中から選ばれて命が誕生する。』
一般的に性行為をすれば、常に妊娠する可能性があります。1回の射精により排出される精液は2~4㎖、また、1㎖中の精子の数は約1億と言われています。そして、卵子にたどり着く頃には、数百個以下にまで減少してしまいます。最終的に卵子と受精できる精子はたった1つです。しかし、これで妊娠が成立するわけではありません。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら約1週間かけて子宮へ移動します。さらに、子宮内膜(赤ちゃんのベッド)に潜り込みます。これを、「着床」と言います。着床もまた、簡単なことではありません。子宮内膜の状態や細胞分裂が上手くいかなかった場合、受精卵が着床しないとこもあります。先に示した式を計算すると、約4億となります。このように、何億もの奇跡がつながって生命が誕生します。
4年前、私自身も出産を経験しました。娘はお腹の中で臍帯(へその緒)が体に巻き付いていたため、分娩の途中で緊急の帝王切開になりました。産まれたばかりの小さな娘を見つめ、「君は、僕の宝物」。夫がつぶやきました。あなたも、誰かの宝物(大切な存在)です。あなたの隣にいる人もまた誰かの宝物(大切な存在)です。まずは、自分自身を大切にして下さい。そして、あなたの周りにいるすべての人々に思いやりを持って生活していけるといいですね。(2022年2月6日岐阜新聞掲載)
1)谷村聡(2016):特集:小児科外来における思春期診療の実際 私がおこなっている中学生・高等学校での性教育授業,外来小児科,Vol.19,No1,49-52.